創業融資を受ける創業者の95%は、日本政策金融公庫の創業融資で創業資金を調達します。ただ、最近公庫の創業融資の審査が厳しくなっているとの話が聞かれます。以前ならよほど「創業計画書」の内容がひどくない限り、通っているような案件で融資が断られているようです。
創業融資の審査が厳しめになっている!
1. 原因
その原因は、2024年春に出された金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の改正にあるのかもしれません。
この改正では、「安易な融資を行わず融資先の経営内容や事業計画の内容をしっかりと見極めるように」といった趣旨が記載されています。
一方、日本政策金融公庫は、「一般の金融機関が行う金融を補完すること」を旨としつつ、「国の中小企業・小規模事業者政策や農林漁業政策等に基づき、法律や予算で決められた範囲で金融機能を発揮している政策金融機関です。」との記載が日本政策金融公庫のホームページにあります。
公庫は金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」に縛られることはありませんが、財務省所管の「民間金融機関を補完するための国が経営している金融機関」という性格上、民間金融機関と足並みを揃える動きにならざるをえません。
そこで上記の改正の内容にあるように、「申請内容を吟味した上での融資審査」が求められるようになっているのでしょう。
2. 対応策
創業融資を成功させる確率を高めるためにしておくべきこと。
【売上計画の根拠の精度を高める】
創業融資の際、最近特に公庫から指摘されることの一つが、「売上計画の根拠を明確に説明してほしい」という点です。「何となく、これぐらいの売上が見込めるのではないか」という売上計画では、もう通らないということでしょう。
たとえばランチ営業も行う居酒屋の場合なら、「見込み客を集めるために、このような取組を行います。この取組を行った結果、客単価◯◯円で◯◯名の集客を見込んでいます」と説得力高く伝えるため、ウィークデイのランチ営業/ウィークエンドのランチ営業/金曜日の夜の営業/ウィークエンドの夜の営業/季節要因を加味した「客単価」「客数」の増減などを考えた上で、1年間の毎月の売上計画表の作成くらいは行っておきたいものです。
【所定の創業計画書とは別の詳細な創業計画を作成する】
公庫の創業融資で提出を求められる創業計画書は、A3サイズで見開き1枚。これだけでは、創業する事業について詳細な情報を伝えることができません。「創業する事業が成功できる理由」に説得力を持たせるのは難しいでしょう。
そこで、緻密に考え抜かれたA4サイズ10枚程度の創業計画書を提出することで、「成功する確率が高い」と納得してもらいやすくなります。
【面談のシミュレーション】
創業融資の場合、創業計画の内容をより詳しく聞くための「担当者による面談」が必ずあります。その面談で、創業者がうまく説明できない場合、融資審査に通らないことがよくあります。
事前に面談のシミュレーションを行い、想定される質問に対してスムーズに答えられるように練習しておくことで、審査が通る確率を高めることができます。
創業融資の審査のポイン
1. 重点ポイント
「事業に関する経験」、「自己資金の蓄積」、「事業計画書」です。これらがしっかり揃っている創業者は、事業を始める準備がしっかり出来ていると判断されます。
ただ、経験があれば成功するとか、経験がなければ失敗するとかと判断するのは、難しいところがあります。経験不足であっても、潤沢な自己資金の準備がある、経験不足を補って余りあるような綿密な事業計画書を自ら作成している、業界経験豊富な人をパートナーにする、売上を早期に確保できる根拠資料(契約書・発注書等)を準備する、業界経験以外の経営者としての能力をアピールする等の不足を補う方法はあります。
自己資金についても、一般的に必要な資金の3割は必要とされていますが、「自己資金がいくらまでないとだめなのか」ということは、きっちり線引きされているわけではありません。お金が貯められなくて、自己資金が少なかったとしても、「代わりに、こういったノウハウを得ています」であるとか、「こういったサポートを周りから得ています」であるとか、「こういった、よそにないような商品やサービスがあるので、可能性があります」とか、補うようなものがあれば審査に通る可能性はあるでしょう。
事業計画については、見た目のきれいさと言った表面的なことではなく、計画が本人の言葉で語れているかどうかが重視されます。自分の事業を自分の言葉でちゃんと語れているか、あと、やはり、経験から出てくる言葉というのは、重みがあるので、そういうところでの経験について、きちんと説明できているか、あと、創業の自己資金の貯め方、こういったところが見られています。
2. 個別面談の際に聞かれること
創業計画書や添付資料の内容が充実していても、面談で審査に落ちるということもあります。なぜなら、自分で創業計画についてきちんと説明できないと、担当者は「この創業者では、この創業計画を実現するのは難しいな」と判断されてしまうからです。だから、面談に臨む際はあらかじめ質問される内容を把握した上で、そういう質問に対し、スムーズに説明できるように、事前に練習する必要があります。
よく聞かれる質問例
① なぜ、このビジネスをはじめようと思ったのか(創業の動機)
② 今まで、どのような仕事をしてきたのか(経験・経歴・実績)
③ 事業の具体的な内容と業務の流れ(商品・サービス・お金の流れ)
④ ターゲット顧客とニーズについて
⑤ 売上の見通し・根拠
⑥ 販促方法・営業方法について
⑦ 資金の具体的な使い途について
⑧ 事業がうまくいかなかった時の対策
⑨ 融資が満額でなかったときの対処法
⑩ 他の資金調達手段の見通し
⑪ 家族の協力体制
など
まとめ
確かに公庫の創業融資の審査は厳しくなっていると言えるのですが、最新の審査の傾向や対応方法を踏まえてしっかり準備をすれば、創業融資を満額借りることも可能です。
また、公庫の創業融資に加えて、民間金融機関との協調融資を利用することで必要資金の満額を借りるという手もあります。
創業融資を検討しているものの、自身で対応するのが厳しいという方は、ぜひ当事務所へお気軽にご相談ください。安心して創業融資の申し込みを完了できるよう丁寧にサポートいたします。
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素晴らしい記事で、よくわかりました。
ありがとうございました。
コメントありがとうございます。